スカンジウムvs.ZR 9000
あなたは、スカンジウムとZR 9000の良い点と悪い点を含めて、その違いを簡単に言えますか?
私のスカンジウムについての知識は、アルミニウムに比べて僅かだが、当初、我々は少量のスカンジウムを6061合金に加えたものでフレームを作ろうと考え試作してみた。だがそれらのフレームは、通常の6061合金フレームより特性が劣る部分があり、採用するには至らなかった。しかしバイク産業では、スカンジウムを添加した素材が、少量ながら一部で使われている。これら7000系アルミ合金やスカンジウムを添加されたものは、主に溶接の熱による劣化や構造上の歪を軽減する為に使われている。しかし、7000シリーズ合金でフレームを作る事が、我々が行っている熱処理のような解決策とはならない。やはり6000系合金フレーム同様、溶接後に熱処理するのが最上の方法といえる。熱処理を行うことで、かなりの量の残留応力を取り除き、溶接前の特性に限りなく戻るからだ。だが、7000シリーズ合金の熱処理工程は非常に難しい上、強度が最高値になるように熱処理を行った場合、逆に溶接部分の応力腐食割れを引き起こすことがある。その為、フレームのアライメントや、チューブの形状に制約を与えてしまい、理想的なフレームデザインに影響を与えることになってしまう。
スカンジウムをほんの少量アルミニウムに添加すると、添加されたアルミ合金は堅く強くなる。しかし、スカンジウムはアルミニウムへの溶解性が大変低い。バイク用のスカンジウム合金は、約0.1パーセント添加されている。7000合金への亜鉛の添加量が、約5から8パーセントである事とは対照的だ。調べてみると、ジルコニウムは合金内の添加物結晶生成をコントロールする為に、ごく少量使われていることが判った。しかも面白い事に、私が見たすべてのスカンジウム合金にも、結晶生成のコントロールの為に、いくらかのジルコニウムが添加されている。私は、合金に加えるのをジルコニウムだけにしても、添加する量を適切にすれば、同様の効果が得られるのではないかと考えた。
私は航空機用材料の研究会議に参加した際に、航空機産業で使われているスカンジウム合金は、バイクに求められているような使われ方では無いということに気が付いた。スカンジウムを大量に添加したこれらのアルミニウム合金は、普通の超硬アルミニウム合金が170度〜220度で強度を失うのに対し、390度という高温まで強度を失わず、しかも高い耐久性を持っているというのだ。バイクは大気温度で使用されるので、このような性能のアルミニウム合金を、バイク用に使う利点はあまり無いと考えた。
これら2種類の合金を採用する際の目的は、全く違うと考えた方が良いだろう。スカンジウムの添加された合金は、高い耐力強度を示し、軽量スチールフレームのような感覚と柔軟性を持ちあわせた、大変軽いフレームを作ることが出来る。しかし、その性能と引き換えに、疲労寿命と応力疲労寿命を犠牲にすることになるので、フレームの性能はごく限られた間しか持続しないだろう。我々の考えるすぐれた性能のフレームというのは、力を効率よく伝え、軽量で扱いやすく、丈夫で長期間に渡り使用することができるというものだ。7000系合金やスカンジウム合金は、満足のゆくものではなかった。そこで様々な研究をしてきた結果、我々はZR9000という名の理想の素材を開発することが出来た。そしてその製造法は、少々費用が高いがZR9000合金を溶接し、熱処理を施す方法をとることにした。この方法をとることで、軽量スチールフレームより軽く、横方向とねじれ方向に対し高い剛性を発揮し、長期に渡り高い性能を発揮する理想のフレームとすることが出来るのだ。ZR9000合金はバイクに、より効率的で、堅牢、高い性能、扱いやすいという性能と、ひとつのシーズンより長い間使うことが出来る、すぐれた耐久性を両立させる素材なのである。